up date 21 MAY 2007 |
『はだしのゲン』タイ語版の経緯 |
私の友人の坂東弘美さんが中国北京国際放送局の日本語部のアナウンサーとして勤務していた時、職員専用のバスの中で一人の女性と知り合いになりました。彼女も同じくタイ語部に勤務しているチャットナコーン・オンカシングさん。話をしているうちに彼女は長崎に留学していた、ということです。そして滞在中、永井博士の「長崎の鐘」を翻訳していました。
坂東さんは私達「プロジェクト・ゲン」が「はだしのゲン」をロシア語と英語に翻訳していることを話しました。
なんとチャットさんはold versionの『ゲン』英語版1巻をタイ語版に翻訳した人でした。
彼女は長崎滞在中に原爆の恐ろしさを知り、その後広島の資料館にも足を運び、「はだしのゲン」に出会ったそうです。そしてすぐ作者の中沢啓治さんの許可をもらい1巻をタイ語版に訳した、ということでした。
そして私達がロシア語版や英語版全10巻を作っていることを知り、彼女も全巻の翻訳に取り掛かりました。
この奇遇な出会いで『ゲン』のタイ語版全10巻が完成することになったのです。私達はデジタル画像を送ったり、英語や日本語の本を送って彼女をサポートしました。2007年『はだしのゲン』全10巻はタイのマティション社から出版され、3月末のバンコクで行われた国際ブックフェアに出展されました。チャットさんとマティション社は坂東さんと私をブックフェアに招待して下さいました。
私達は3月末に被爆者の方を交えて総勢5人でタイを訪問しました。行く前から滞在中のテレビやラジオ、新聞などの日程がぎっしり詰まっており、タイの人々の原爆に対する関心の深さを知りました。特に広島の被爆者の方にはずいぶんの関心が寄せられ、滞在中は大きく報道されました。
私が何より楽しみだったのは『ゲン』の出版にかかわった方々に会える、ということでした。
ゲンを理解し、愛してくださる人たちがタイにいる、私にとって彼らは私達がタイに行く前からの心の友人でした。出版社への表敬訪問でもとても暖かく迎えられ、まさにゲンが私達を繋いでくれたことを実感しました。
3日間はブックフェアの会場である国際会議場に缶詰状態でゲンのPRをしたり、オリヅル講習会をしました。シリントーン王女さまがマティションのブースに立ち寄られた際、フランス語にもたん能な方とお聞きしていましたので私達は『はだしのゲン』のフランス語版を献上しました。王女様はマティション社の令嬢と親しくわざわざ引き返して来られ、「ゲンは売れていますか。」とお聞きになったということです。
本を買った大人や子供達はホールの床に輪になり買ったばかりの本を読んでいます。食料持参のグループはあちこちで食事をしています。期間中は100万人が訪れる、というこの大規模なブックフェアは目を見張る物がありました。タイに滞在中、チャットさんはじめマティション社は心を込めて私達を遇してくださいました。今まであまり馴染みのなかったタイが今ではたくさん友達のいる近い国となりました。
以上簡単ですがタイ語版出版の経緯とタイ訪問の報告です。
バンコク・国際ブックフェアーと『はだしのゲン』タイ語版 | ||||
マティション社はタイではナンバー3に入る大手の社会派出版社(社員1000人)で新聞も出しています。漫画の出版は今回初めてということで自社の新聞に私たちの訪問を大々的に報道し宣伝に力を入れていました。 マスコミは国民を啓蒙する義務があるという姿勢のマティション社から『はだしのゲン』が出版されたと言うことを、私たちは心強く思っています。現在社長の代行をしている長女のパンヴゥアさんの『知識は武器である』という言葉に、マティション社の社会的責任感を見る思いがしました。 3月30日から4月1日の3日間バンコクで行われた国際ブックフェア出展のためラスト・スパートをかけて完成したものです。フェアで「ゲン」のPRをするため名古屋の坂東弘美さん(フリーランスアナウンサー)、西本多美子さん(石川県原爆友の会)、東滋野さん(平和サークル「むぎわらぼうし」)、魚住さん(原爆認定集団訴訟弁護団)、浅妻南海江(プロジェクト・ゲン)の計5名がタイを訪問しました。 フェアは期間中100万人が来場、海外出版社を含め800ものブースのある大規模なものです。 初日、マティション社の大きなブースの中心に出来立ての「はだしのゲン」が展示されました。西本さんの持参した千羽鶴がコーナーに飾られ「ゲン」をいっそう引き立てていました。フェアの総裁シリントーン王女との謁見、サイン会、折鶴実演とフェアの日々はめまぐるしく過ぎていきました。タイの人たちにとって「ゲン」の1000バーツは高額で富裕層しか買えない価格だそうですが初日3時間で17セット売れました。図書館や学校などの公共施設で多くのタイの子供たちがタイ語で話す「ゲン」に出会うことを願っています。 なおCO-OP石川から石川県原爆被災者ともの会を通じて「原爆と人間展パネル」がタイ側に寄贈されました。 (プロジェクト・ゲン 浅妻南海江)
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バンコク平和の旅 (2006.3/28〜4/5) | ||||
訪問 メンバー |
浅妻南海江(プロジェクトゲン代表) 金沢 西本多美子 (被団協石川県支部長) 金沢 東しげの (むぎわらぼうしの会代表) 金沢 坂東弘美 (フリーランスアナウンサー) 名古屋 魚住昭三(イラク・被爆者関連訴訟担当弁護士) 名古屋 |
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3/27(火) | 18:45 スワンナブーム国際空港着 マティション出版社ゲストハウス泊 | |||
3/28(水) |
10:00 マティション出版社 訪問 出版社と記念品交換 ・プロジェクト・ゲンからは「中沢啓治氏サイン」「はだしのゲン英語版」 平和の本4冊を贈呈 ・CO−OP石川からは、石川県原爆被災者友の会を通じて 「原爆と人間展パネル」等を贈呈 マティション出版社グループの各メディアからのインタビュー 「どうして中沢さんは『はだしのゲン』を書いたのか」 『はだしのゲン』に書かかれていることは作者の体験か」 「どうして漫画という形で書いたのか」 「日本の子供達はこの漫画のことをよく知っているか」 「今日本に被爆者はどのくらいいるのか」 「原爆が落とされた時の様子はどのようなものだったか」 |
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3/29(木) | iテレビ局取材 (iTV局は唯一の地上波民間局。 iは英語のindependent(独立)からとった。 民主化を求める市民らを軍が武力で弾圧した92年の流血の政変の際、政府系テレビ各局が軍寄りの報道を繰り返したことへの反省から新聞社や銀行が出資して、初の民放局として96年に開局した) バンコク・ビジネス・ニュース社の取材 「プロジェクト・ゲンに政府から資金が出ているか」 「漫画のいいところはどこか」 「被爆体験について知りたい」 |
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3/30(金) |
第35回国際ブックフェアー会場 『シリキット女王記念国際会議場 16:00-18:00 シリントーン王女、会場視察、メイン・ブースを回る マティションブースでは訪問メンバーが『はだしのゲン』フランス語版を献上 18:00 一般公開 マティション社ブースでは『はだしのゲン』販売の他サイン会と折鶴実演も行われる 『はだしのゲン』の展示前では若い人が集まる 日本語を知っている人たちがかなりいた 子供達が床にすわって買ったばかりの本を読んでいる 入場者は弁当持ちできて床に座って食べている ごった返しの中で、若い社員達の元気なセールス 「ゲン10巻」本日3時間で17セット販売 |
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3/31(土) |
13:00〜15:00 サイン会 折鶴実演とプレゼント 5:00〜16:00 パネル・ディスカッション ステージで訪問メンバー4人とチャットさんは司会者のインタビューを受ける 「現在の日本の被爆者の現状について知りたい」 「はだしのゲンは日本でどのように読まれているか」 「海外での反響はどうか」 「何ヶ国語に翻訳されているか」 16:30〜 "Kor Kon's People of the World"(コーコンズの世界民族)取材 「ゲン10巻」73セット販売 |
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4/1 (日) |
第35回国際ブックフェアー (3日目) 11:00〜 文芸雑誌「フリック」取材 13:00〜15:00 サイン会 折鶴実演とプレゼント 20:00 S-TV局で Yip(ジップ)氏主催 「People for Human」(人類に尽くす人々)インタビュー番組にゲスト出演 (タイでも原子力発電所の計画があるがチェルノブイリの事故など考えると いろいろな問題がある。この点に関してどのような意見を持っているか) |
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4/2 (月) |
第35回国際ブックフェアー (4日目) 13:00〜13:50 「デイリーニュース新聞社」 (タイで2番目に大きい新聞社)で取材 18:00 お好み焼きパーティ「ゲンのお好み焼きとおにぎり」 (『はだしのゲン』10巻にある広島お好み焼きを作る) |
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4/3 (火) | 観光 (エメラルド寺院・王宮・ワットポー・タイ式マッサージ) 王室愛用レストランでお別れ夕食会 (マティション社主催) |
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4/4 (水) | 帰国準備(ショッピング) 翻訳者チャットナコーン・オンカシングさん主催お別れ夕食会 23:55〜 スワンナブーム国際空港出発 |
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4/5 (木) | 帰国 |